第2学期 始業式 校長 古賀誠子
先日、校長室のテーブルに、用務員の方がキウイの実を飾ってくださいました。こげ茶の小粒の実が14粒、実りの秋の始まりです。マリア校舎の横でとれたキウイだそうです。季節が進んでいくと、自分もそれに合わせて成長していかなければと、身の引き締まる思いがします。
みなさんも、新しい学期を迎えるにあたり、一人一人が1学期の反省を踏まえ、目標を高く掲げていることと思います。志を書き記し、部屋に貼っておくと、毎日目的意識を持ってすごすことができ、目標が達成され、夢が実現すると言われます。2学期は、1学期に不足があったものを補うだけの十分な時間があります。特に3年生は、2学期に多くの人の次の進路が決定します。後悔することがないように、全力を尽くしてください。自分の専門の分野を極めるということは、他者に、そして、社会に「自分を分け与える」ということにつながります。
さて、皆さんは、夏休みは、どのように過ごしましたか。私は、7月25日、26日の2日間、グローバル特進コースの1年生の探究学習のテーマの仕上げとなる地、福島県の浪江市、双葉町、いわき市の視察に行ってまいりました。国道6号線を南下し、一部帰還困難区域を通過すると、まず目に入るのは、放射線量計(モニター)です。帰還困難区域は、放射線量が高いレベルにあることから、通過することはできますが、いまだに居住はできない区域です。人の住んでいない家が目立ちます。私たちはまず浪江市に向かいました。浪江市には、東日本大震災の被害と、その影響について展示してある「東日本大震災・原子力災害伝承館」があります。巨大津波によって基礎ごと流された郵便ポスト、人命救助のために向かって津波でつぶされてしまったパトカー、避難所での人々の数々の写真などが展示されています。家族や友人と抱き合って涙を流す姿、海に向かって、深々と頭を下げ、手を合わせて祈る人たち姿、どれもが東日本大震災そのものを映し出したもので、涙を流さずにはいられませんでした。津波の規模の大きさと、その被害がどれだけ甚大なものであったかあらためて認識させられます。伝承館の近くにある請戸(うけど)小学校は、現在は、東日本大震災遺構として残されていて、中が見学できるようになっています。校舎の一階部分は、津波ですべて押し流され、がれきだけがとり残されています。屋外にある学校の大きな時計も地震発生時刻14時46分で止まったままです。体育館の床ははがれ落ち、ステージは傾き、基礎はむき出しになっています。町がこの体育館に残る津波の痕跡を調べた結果、15.5メートルの津波の高さが算出されています。請戸(うけど)小学校の生徒は、先生方の指示で1キロ先にある大平山に走って避難しました。どこから山にはいるのか先生方もわからなかったところ、ある男児が、「僕、一度野球の合宿でのぼったことがある」といい、その子に全校生徒、そして先生もついていって登山し、すべての命が守られました、奇跡のストーリーです。双葉町は、帰還困難区域が多いため、2011年3月11日のまま、手つかずの状態で残された建物が多く立ち並んでいます。地震で窓ガラスも割れ、なんと店の中の商品も中にとり残されたままの状態です。いわき市には「東京電力廃炉資料館」があります。そこには東京電力の反省と教訓が展示してあり、地震発生から福島第一原発の事故の全貌がわかります。多くの人たちが、故郷への思いをのこしたまま、町を出て行ったそうです。
しかし、一方で、多くの課題を抱えながらも、復興は着実に進んでいます。町はエネルギー転換のため、再生可能エネルギーを生み出す取り組みを行っています。田畑には、ソーラーパネルが所狭しと立ち並んでいます。暑い中、除染の作業を行うたくさんの作業員の方々に出会いました。ふるさとを再び元の姿にもどそうと、まだ誰もいない場所に、新たに町役場を立て、住宅を建て、駅をつくって、町に人を呼び戻そうと準備を進めています。特に若い人たちが使命感を持って取り組んでいる姿には心打たれます。「戻ってくるかなあ…」現地の方の言葉が心にささります。私たちは、あらためて、東日本大震災で被災された方々、被災地の復興を覚え、共に祈る二学期でありたいと思います。
本日の聖書の箇所、「これらの小さなものを一人でも軽んじないように気をつけなさい。彼らの天使たちは、天でいつもわたしの天の父の御顔を仰いでいるのである。」「小さなもの」の意味は多岐にわたりますが、神様は、もっとも弱きものの上にもっとも大きな力を発揮されるお方です。そして、わたしたちも小さな群れですが、神様の恵みと祝福は大きな群れと同じだけのものを毎日受けています。9月4日に行われる、海星祭・愛校バザーも、私たちの小さな働きが大きな力になるように、一人一人が意識を高く持ち「自分を人に分け与える」海星祭になるようにと願います。皆でよいものに仕上げていきましょう。